耳の中にゴキブリが入った!? -深夜の救急外来当直日記-
深夜の救急外来では初期研修医が採血・検査のオーダー出して上級医にコンサルトするという形がほとんどだと思います。いつも通りのよくくる疾患なら簡単ですが、時々くる対応に困る症例は上級医と一緒に頭をかしげることでしょう。
今回はそんな1症例「耳の中にゴキブリが入った」です。
【症例】:中年男性
【主訴】:耳の中にゴキブリが入ったかもしれない
【現病歴】:横になって部屋で眠っていると耳の中に何かが入った。今も動いており耳が痛く、ガリガリ動く音がする。よくならないので救急外来受診した。小さなゴキブリが家の中でよく出る。
【来院時現症】:意識清明 Vital 問題なし 耳の中を耳鏡で覗くと黒色の虫、動く脚が確認できる
おそらくそういうことです。耳の中にゴキブリが入った。
この症例で一番気をつけないといけないことは「鼓膜穿孔させないこと」です。
無理に鉗子などを突っ込むと虫を刺激して奥(鼓膜)の方に移動し、穿孔のリスクが高くなる可能性があります。
実際に行った虫を摘出するまで次のような対応を行いました。
①虫の入った耳を上向きに横にして暗い部屋でしばらく待つ
蛾など虫は光の方へ集まる習性がありますが、逆にゴキブリなどは光を避ける習性があるため光を当てず、暗闇でしばらく出てくるのを待ってみました。
結果としては失敗に終わりました。
②キシロカインスプレー、ゼリーを注入する
オリーブオイルを注入してゴキブリの動きを止めるという方法もあるようです。今回はキロカインを使用しました。2.5mlシリンジでキシロカインゼリーを吸い耳の中に注入しました。注入後しばらくは動きが激しくなり耳の痛みが増悪してしまいました。しばらくは虫の動きが続きましたが、数分後確認すると痛みが消失しました。
後は耳鼻科セットで虫の体を摘出しました。摘出した虫は動かず死んでいるものと思われます。
手技を終えて・・・
蛾などの耳内異物はみたことがありました。その時は光をあてると出てきたのですぐに終わったのですが、今回は局所麻酔薬を使用しての摘出と新しい体験でした。
なかなか見る機会のない症例ですが、もしも出会った時にはそんな対応があるのか、と参考にしていただければ幸いです。耳鼻科オンコールのいる病院に患者さんがきてくださることを祈ります。