麻酔科-くろねこBlog

麻酔科医と子育てとか日々の学び

心臓の酸素消費❤️

 心臓麻酔をするにも、循環器内科で心不全の治療をするにも、重要と思っていることに「心臓の酸素消費量」があります。カテコラミンの選択にもか変わってくると思います。

 

 「心臓の酸素消費量」を規定するのは心臓が、いかに働いているか(負荷に対してどれだけ頑張っているか)が重要です。

 簡単に言えば頻脈でたくさん収縮している心臓や収縮力が大きい心臓はより多くの酸素を消費します。前負荷が大きい:すなわち静脈還流量(Venus Return:VR)が大きければ心臓は容量負荷で広がりより強い収縮力を生み出しますし、後負荷が大きい:すなわち心臓の後の血管抵抗が大きければそれを超えるように心臓は強い収縮をする。つまり前負荷・後負荷の増大、頻脈、収縮力の増大は全て心臓の酸素消費量を増やす方向に向かう。逆に酸素消費量を減らしたければそれらを減らすように対応すれば良い。

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 前負荷が増大している指標にはエコーによる下大静脈系IVCや右室容積などがありこれを減らすために治療としては硝酸薬や利尿薬を使用してやればいい。(硝酸薬は静脈を拡張することで静脈に血流をプールすることでVRを減らせる、利尿薬は大概に体液をOutさせることで循環血液量を減らせる。)

 後負荷が増大している場合には血圧が高くなる。Ca阻害薬(ニカルジピンなど)で血管を拡張させたり、硝酸薬の中でもニトログリセリン(ミオコール®️)などは血圧も下げられるので後負荷を減らすことができる。

 心臓の収縮力・頻脈を下げる目的ではβ阻害薬を使用すれば良い。(逆に言えばDOB、DOAなどのβ刺激作用のある薬剤は心臓の酸素消費を増大させる。)

 

 

 こんな感じに考えながら日々臨床をしています。心不全やカテコールアミンの選択で役に立つ気がします。

 

Q:STEMI患者、sBP/dBP 70/40  HR100と血圧も低下してきた。PCIができるまでもう少し時間がかかります。何をしますか?

 

A:心筋梗塞の治療はMONAと習う。

 M:モルヒネ

 O :酸素

 N:硝酸薬

 A:アスピリン(抗血小板薬)

モルヒネ心筋梗塞による疼痛によるを取ることによって痛みによる頻脈を防げる→HRを上げないで心臓の酸素消費量を減らす

酸素は冠動脈からの酸素不足である心臓に酸素を供給することで心臓の酸素消費量の増大に対して足りない酸素を補う。

硝酸薬は冠動脈を広げるというよりは、静脈還流量を減らすことによって前負荷を減らし、心収縮力を減らし酸素消費量を減らす。

アスピリンACSによる冠動脈の血栓傾向をこれ以上進まないようにし、さらなる被害を抑える。

 

4つのうち3つは心臓の酸素消費量に関係があるところです。

下壁梗塞や右室梗塞でモルヒネ・硝酸薬使いずらいなど例外はありますが、心臓の酸素消費量を少しでも抑えるための治療という考え方、面白いと思います。

 

さて、下がってきた血圧は何で上げますか?

DOAドパミン?イノバン?

DOB?ドブポン?

NAD?ノルアド?

AD?ボスミン?

エフェドリン

フェニレフリン?

 

NADかフェニレフリンがベストかと。DOB、DOAのβ作用で頻脈になられても酸素消費量増えてさらに心臓が苦しいことに・・・・。実際、AMI患者にNA vs DOADOAの方が不整脈上げる報告ありますし・・・・。

 

ん?NADもアルファ作用で血管を閉めて後負荷を上げて酸素消費量を上げるんじゃないかって?

物事バランスですよ、完璧にいい薬なんてない、こっちの方がマシ。ベストなんてないベターをやり続けるしかないんだ・・・。カテコールアミン使うということはリスクベネフィットの天秤なんですよ、と思いながら日々臨床してます。