麻酔科-くろねこBlog

麻酔科医と子育てとか日々の学び

心不全(Heart Failure)

あくまで私の頭の中です。

 

心不全は「心臓がポンプとしての機能を保てなくなる状態」

病名」ではなく「病態」。なので原因がある。

発熱」という病態病因に「肺炎」がある様に

心不全」という病態には病因がある。

 

心不全という病態を引き起こす増悪因子として有名なのはFailure。

F oget medicines:薬の飲み忘れ(降圧薬など)

A rrhythmia/Anemia:不整脈/貧血 (高拍出性)

I schemia/infection:虚血/感染(敗血症性心筋炎症)

L ife style:塩分、ストレス

U pregulators:甲状腺機能亢進症、妊娠

R heumatic:リウマチ性を含めた弁膜症

E mbolism:肺血栓塞栓症PE

などの原因を探していく。

 

上記心不全の原因となるものは心臓に負荷を与える。すなわち「前負荷」と「後負荷」を大きくする。心不全の病態を改善するためにはそれぞれの原因に応じて前負荷と後負荷をコントロールしていく。

 

 

クリニカルシナリオCrinical scenario (CS)は心不全の初期対応に有益な情報を与えてくれる。

CS1 sBP140はおおよそ急性発症で来院することが多い。病態としては後負荷の増大による左室の機能不全それに続く肺うっ血による呼吸困難を訴える。

病歴としては数時間-日前ぐらいから始まる呼吸苦、薬の飲み忘れや貧血、脚気心、甲状腺など急性に発症する原因がある。検査としては胸部レントゲンで肺うっ血を認める。ひどいと右室も鬱滞しIVCも呼吸性変動の消失まで認められることもある。

 

CS2 sBP100-140はおおよそ慢性の経過で来院することが多い。病態としては前負荷の増大によるVR上昇による心臓の拍出困難。病歴としては数週間前から労作時の呼吸苦、夜間呼吸困難、起座呼吸。塩分過多や、薬の飲み忘れ、肺炎などが原因は様々。

検査としては腹部エコーで明らかな下大静脈IVCの腫脹と呼吸性変動の消失。

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CS3はショック状態、CS4はAMI、CS5はう心不全、細かくあるが今回は割愛。

 

だいたい救急外来に来るのはCS1かCS2が多い。だからと言って血圧だけで何かを決めるわけではなくそれぞれ前・後負荷のバランスが悪いということを理解した上で治療を考える。

 CS1-2心不全の治療でとりあえず症状の改善が認められるであろう対応は

①酸素投与 ②NPPV 陽圧換気 ③硝酸薬

①酸素投与は心臓の酸素需要に対する供給をあげ、肺水腫の病態である肺に足りない酸素を与えてくれる。

②NPPVによる陽圧換気は左心不全で肺がビチャビチャになっているところを膨らませ肺水腫の病態を改善さ

せる(肺胞を膨らませて肺から水を追い出せる)。

③硝酸薬は心臓の前負荷と後負荷をともに改善させられる。

よく使われる硝酸薬にニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ニトログリセリン製剤がある。耐性など問題もあるが概ね、血圧の低下作用と即効性の違いで次のように使っている。

ニトログリセリン(ミオコール®️) :BP 140以上 血圧も下がりやすいので後負荷を下げることを狙いつつ、前負荷を下げる。

硝酸イソソルビド(ニトロール®️):BP 100−140 血圧がニトログリセリンより下がりづらいので血圧が下がらず前負荷を下げられる。

ニトログリセリン(シグマート®️):BP 100-140ぐらいかさらに低めの時。

CS1はびまん性肺水腫の状態でうっ血所見はメインではないことが多いので利尿薬は必要のないことが多い。

逆に CS2は全身性の浮腫がメインの状態であり利尿薬の使用により体液量のバランそを整えることが必要になることが多い。

ただあくまで多くの心不全に効果があるということで例外はいくらでもあり

大動脈弁狭窄症ASがある患者で心不全を発症しているのに硝酸薬使えば血圧下がって一気に脳血流失われる。

あくまで原因になっている病態が何かを特定した上で治療をするのが大事。