麻酔科-くろねこBlog

麻酔科医と子育てとか日々の学び

【各科の手術麻酔】肝臓:肝切除時の麻酔

※あくまで私の個人的な考えなので参考程度に・・・

 

肝臓の切除の手術の麻酔で特徴的・重要なのは

①出血を抑えること(肝臓に溜まる血液を減らす)

②部分切除では肝動脈と門脈のクランプ:プリングル法が行われること

です。一つずつ注意することを・・・。

 

①出血を抑えること(肝臓に溜まる血液を減らす)

 

 肝臓での出血は「肝断面の切除時」にじわじわ漏れ出す。

 これを防ぐための一つの方法として、肝臓への血流を少なくするためプリングル法が行われる(肝臓にたまる血流を減らすことで出血量を抑えるということである)。

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 そのため肝臓への流入(In)は絞られるのでいかに肝臓から出血しやすいかどうかは肝臓からの流出(OUT)のしやすさに依存する。

 肝静脈の血流は

 「肝静脈」→「下大静脈」→「右房(胸腔内)」へと流入する。

 そのため(1)下大静脈の圧を上昇させない (2)胸腔内圧を上げない工夫が必要になる。

(1)下大静脈圧を上げない

 一つは輸液を絞り気味にする。輸液をしすぎると静脈系の血液が鬱滞気味になる。CVを入れてCVPを参考にするのは近年あまり相関しないと言われているため、参考程度にとどめ筆者はSVVの変動で呼吸性変動が認められない程度で最低限の輸液を維持するようにしている。注意するのは SVVの変動が13%というのは一回換気量が10ml/kgの時の値であること。昔は開腹術では10ml/kg/hrで輸液と言われるがそのペースで行くと出血も相対的に増えていき、血液希釈も生じ、必要のなかった輸血が必要になる可能性もあるのであまり私はやりません。 

(2)胸腔内圧を上げない

 もう一つは一回換気量を減らす、PEEPを下げる。一回換気量を6-8ml/kg(理想体重)、PEEPをかけないようにすると胸腔内圧が下がるので心臓に血流が戻りやすくなる。太っていたり肥満であって酸素化が保てない場合はこの限りではない。あくまで呼吸器系と術野の出血とを天秤にかけて相談しつつ。術野で出血していそうだったら肥満でも空気を読む。

 

 

②部分切除では肝動脈と門脈のクランプ:プリングル法が行われること

もう一つの特徴プリングル法。肝臓が耐えられる時間を考え、クランプの時間はおよそ15分程度。

注意するのは解除した時。解除すると血圧が下がり、EtCO2が一過性に上昇する。

整形外科のターニケットの時と同様に血液がクランプ後のところに持っていかれるのと(VRが減る)、血管拡張物質が漏れ出すことによる相対的循環血液量現象の状態かなと思います。

  徐脈でない限りネオシネジン®️(フェニレフリン)ボーラスで対応してます。手術に入るときは術者に「解除します」と言われたら血圧上げる準備をしましょう。

 

 

 

 普段肝臓で気をつけているのはこんなところです。術者から「アルブミン入れて」と言われることありますが、効果に甚だ疑問を感じつつも初期研修医という立ち位置というかパワーバランスで泣く泣く入れてます。病棟管理は向こうがするのでやむをえず。

 輸液は外液中心でいれ絞り気味にするので、尿量が0.5-1ml/kg/hrというのはまず無理ですが、術中尿量少なめですが覚醒後リカバリーで十分量出てくるので問題なくやってます。

 今の所困ってないのでこんな感じの管理で今後も行こうと思います。肝臓はまぁ輸血しないに越したことはないと思うので。