麻酔科-くろねこBlog

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初期研修でよくやる麻酔の抜管編 (Remifentanil麻酔)

初期研修でよくやる麻酔の維持編③(Remifentanil麻酔)のはずでしたが抜管編に。

術中の輸液はいろいろ書くことがありそうだったのでまた今度まとめます。

基本は晶質/膠質浸透圧、絞った輸液と過剰輸液、膠質液が本当に良いのか晶質液がいいのかとかいろんなことがありますので。

ということで今回はひとつ飛んで

初期研修でよくやる麻酔の抜管編( Remifentanil麻酔)

です。

 

 麻酔を3つに分けると

①導入②維持③抜管の三段階。

飛行機と同じで離陸と着陸が特に慌ただしい、そんな着陸と言われる抜管についての考え方を。

 抜管については①意識がはっきりしてから抜く方法と②深麻酔下に抜いてしまう方法がありますが今回は①の覚醒をしっかり確認してからの抜管についてです。

 

 手術が終わりに向かうにつれて手術侵襲が少なくなり、必要な Remifenanilの量も減ってきます。皮膚の縫合も終わり手術終了→必要であれば体位を元に戻しレントゲン撮影という流れになります。

 レントゲンも問題なければ、吸入麻酔であるセボフルランを切り酸素流量をあげ、RemifentanilをOFF、筋弛緩を拮抗し、覚醒の段階へ移行します。

 

・麻酔からの覚醒を妨げる薬剤は次の2つ

①Sevoflurane:吸入麻酔 MAC-awake:0.66%。 覚醒がぼーっとしている印象

②Remifentanil血中濃度はおよそγ×25 (体重・年齢などで本当は変わる) 。 覚醒がすっきりしている印象

( Fentanylを使用している場合は残っていることがある)

 

 重要なのはセボフルランとレミフェンタニル(アルチバ®️)の切れるタイミングを調整すること。

 SevofluraneのMAC-awake(50%の人が声かけで起きる濃度)は0.66%であり、これは呼気中に含まれるSevoflurane濃度を見るとどの程度体の中に残っているかがわかる。実際にほぼ全ての人が呼気中セボフルラン濃度0.25%程度で覚醒するので起こしたいタイミングまでにこの濃度にする。

 

 ところで吸入麻酔をはかせるために重要なのは①患者の換気量(TVとRR)であると同時に②麻酔器に流れる気体の流量である。

 ①は言わずもがなセボフルランの含まれていない空気で換気することで濃度を減らしていくというもの。

 ②については麻酔器は半閉鎖式回路であることが原因である。半閉鎖式回路であるため吐き出されたセボフルランは再び回路内に取り込まれ再び患者に取り込まれる。どの程度回路から排気があるかが重要で、低流量麻酔をずっと行なっているとその流量分だけしかセボが排気されていかないため体からセボフルランがはけていくスピードが遅くなってしまう。覚醒の時にルーティーンのように酸素流量を6Lに変えているのは麻酔回路内を素早くセボフルランのない純酸素の状態に変えるために行なっている(純酸素にする必要もないかもしれないが。)

 

 話がずれたが、先ほども言ったように重要なのはSevoとRemifentanilの切れるタイミングを調整すること。

  セボフルランのみを残して覚醒させるとなんとなく患者がぼーっとしているような状態で目覚めるような気がする。

 逆にセボフルランをはかせた後、Remifentanilがなくなるように目覚めさせるとすっきりはっきり患者が目覚めるような気がする。

 なのでオススメはRemifentanilを低量(0.05-0.1γとか)で流しておいて挿管チューブによる咽頭反射を抑制しておき、セボフルランが吐き出されたタイミングでRemifentanilの効果が切れるように 薬剤投与を止めておくという方法。麻酔科医は何気なく薬を止めているようで良い目覚めができるように麻酔を行なっているみたいですよ。 ちなみにRemifentanilと Fentanylの効果があるかないかは瞳孔を確認して縮瞳の有無でなんとなく判断したりもできるかな。 

 

  セボフルランもレミフェンタニルも無事に切れて覚醒を確認したらあとは挿管チューブの抜管である。抜管前に気管チューブ内と口腔内を十分に吸っておく。順番は気道内の方が清潔を保ちたいので先に気管チューブを。

 抜管の時にも作法があって①加圧抜管派②吸引抜管(吸引チューブつけたまま)がある。

 ①加圧抜管派は無気肺を膨らませながら、気道内への痰などの気道分泌物の垂れ込みを抑えたいために20cmH20程度の圧をバックでかけたまま抜管する。小児などではこちらの方が多い印象。

 ②吸引抜管派はカフを抜いた後の痰のタレ込みや気道内の分泌物を吸引して誤嚥を防ごうという考え方があったり。気道分泌物が多い喫煙者などはこちらの方が有利なこともある。

 

 目の前にいる患者にどちらが適切かどうかは手術中にどんなことがあったかをしっかりみて考えましょう。

 

 安全な着陸(抜管)ができるように最善を尽くして危ないことを極力なくす。安全第一、事故なく過ごしましょう。