麻酔科-くろねこBlog

麻酔科医と子育てとか日々の学び

初期研修でよくやる麻酔の維持編② (Remifentanil麻酔)

引き続き「初期研修でよくやる麻酔の維持編 ②(Remifentanil麻酔)」です。

麻酔導入終わったのち指導医に任せられることになる部分、①血圧が下がった時の昇圧、逆に②血圧が上がった時の対応、③術中の輸液、など様々なところの注意点を。

 

今回は、「血圧が上がった時の対応」です。

手術中に血圧が上がる原因としては多いのは交感神経の興奮がある時です。鎮痛が不十分であったり、Lap(腹腔鏡)の気腹の影響がよく起こります。

 

一番多いのは「患者が痛がっている時」です。

鎮痛が不十分であると交感神経優位となり、内因性のカテコラミンの分泌が促進され、α/β刺激作用により抹消血管が閉まり血圧が上昇、心臓がより仕事を増して頻脈になります。つまり BPと HRの上昇が起こります。

 

目の前の患者が痛がっているかどうかはどうわかるでしょうか。

バイタルの指標は様々なものがあり痛み刺激で鋭敏に異常を示す順番はおよそ次の順です。

呼吸数 RR→②心拍数 HR→③血圧 BP

 

  筋弛緩のなく自発呼吸を温存した全身麻酔管理であれば呼吸数で患者の状態を推測できます。自発呼吸のない挿管管理でも人工呼吸器の波形で自発呼吸が出てきたり、バッキングを起こすと鎮痛が不十分である可能性があります。

   心拍数の上昇も同様に交感神経の活性化によって生じ、HRがベースより+5bpmされたら少し鎮痛浅いかな?など考えています。血圧は言わずもがな上昇は疼痛で上昇するのはいう必要ないですね。

 

 さて目の前の患者が疼痛を訴えている時の対応はいくつかあります。

 最近のICU患者の管理でも言われていますが重要なのは、鎮痛>>鎮静です。痛がっているからといってプロポフォールを入れて鎮静しても痛み自体は残っています。GOSの麻酔であったら一度回路の流量をあげて高容量Sevoで対応ということもたまに。

 メインになるのはOpioidの調整になるかなと思います。

①Fentanyl 静脈注射 50-100ug

②Remifentanil 流量を上げる or 50-100ug程度フラッシュ

 

 他にも色々な選択肢がありますがよくやるのはこんなところでしょうか。

 血圧の上昇自体は脳血管障害のリスクであったり、過剰な血管収縮による後負荷の増大による心不全、術野での出血リスクなどがあるので下げる方が良いことの方が多いです。下げるとしたら①ニカルジピン1-2mg フラッシュ②Sevoの濃度を上げて血管拡張させるなどの選択肢がありますのでそのあたりは目の前の患者次第です。

 

 レミフェンタニルはやはり効き始めが早く、代謝されるのが早いので便利です(血圧が下がりやすいですが)。せっかくRemifentanil(アルチバ®️ Ultimate TIVA)を使っているんですから目の前の患者の手術侵襲の大きさに合わせて鎮痛を調整してみてはいかがですか?