麻酔科-くろねこBlog

麻酔科医と子育てとか日々の学び

子供が頭をぶつけたら・・・・?

娘が10ヶ月になり、「つかまり立ち」をするようになりました。

いままではハイハイで急発進しているだけだったので転ぶことはなかったのですが、「つかまり立ち」をするようになって頭から転げ落ちることが多くなりました笑

 

頭を打つことも多くなりました。

さてみなさんはどのぐらい頭を強く打ったら病院に連れて行こうと思うでしょうか?

 

ソファーから落ちたら?走ってて転んだら?抱っこしていて落ちてしまったら?

そんな疑問に救急外来で小児を見てきた立場から簡単にまとめてみました。

 

 

頭部CTを取るか否か?

救急外来で医師が子供の頭部外傷を見る時に最終的に困るのが頭部CTを撮影するか否かです。必要ないのであれば取らないに越したことはない(被曝する検査であるので)。

CTを取ることで頭蓋内出血(頭の骨の中での出血)があるかどうかをしることができます。もしある場合は血腫という血の塊がでてきて脳が圧迫され、手足が動かなくなったり嘔吐したり、最悪呼吸が止まってしまう危険性があります。

 

医師はリスクベネフィットを考え頭CTを取るか否かを考えます。

要するに診察して危険そうな状態なら撮影しざるを得ませんが、大丈夫そうであれば取らずに経過観察という形をとります。

 

大丈夫か危険かの判断のためにいくつかのスコアリングが提唱されており、今回はそのうちのひとつのPECARNの診断アルゴリズムを紹介します。

 

●PECARN(Pediatric Emergency Care Applied Research Network)

推奨している国:アメリカ 対象:18歳未満の子ども。

年齢で分かれており①2歳以上と②2歳以下のアルゴリズムがあります。

 

PECARN2歳未満の評価項目:
①GCS15点未満
②いつもと精神状態が違う
③頭蓋骨に触って分かるような骨折がある
④後頭部、頭頂部、側頭部の頭皮に血腫がある
⑤意識消失を認めた
⑥事故が重度である(身長より高い場所から落ちているなど)
⑦親の命令に正しく行動できない

 

PECARN 2歳以上の評価項目:
①GCS15点未満
②いつもと精神状態が違う
③頭蓋底骨折の徴候がある
④意識消失を認めた
⑤嘔吐
⑥事故が重度である(身長より高い場所から落ちているなど)
⑦強い頭痛がある

 

どれか当てはまれば、TBIという脳外科の介入が必要になるような病態が隠れていることが多いのでCTを取ることが推奨されます。それと同時に両親の心配があるとCTを取られることが多いです。
(TBI:頭蓋内出血・脳挫傷・大脳の浮腫・びまん性軸索損傷・midline shift・脳ヘルニア・気脳症・頭蓋骨骨折など)

 

CTを取らずに何もなかった場合でも頭の骨の中の出血は受傷後24時間程度で増悪することがあるので注意が必要です。お風呂や体を温めたりすることは血管拡張を誘発し出血を増悪させる危険があるので受傷後はしばらく安静に過ごすことをお勧めします。

 

 

参考文献 :
Accuracy of PECARN, CATCH, and CHALICE head injury decision rules in children: a prospective cohort study.  Lancet. 2017 Apr 11