麻酔科-くろねこBlog

麻酔科医と子育てとか日々の学び

周術期ステロイドカバー

○ What?

Non-steressの副腎から成人ヒドロコルチゾン10-25mg/day。手術侵襲や外傷などのストレスでは HPA軸が反応してMax 300mg程度に。
周術期の副腎クリーゼを防ぐためにステロイドの補充を行うことをステロイドカバーと呼ぶ。

 

ステロイド分類(ざっくり)

ポイントは①それぞれの力価の違い②作用の即効性と持続時間③臓器移行性。

ざっくり分けると次の4つ

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 (参考資料:今日の治療薬2018)

(1)内因性のコルチゾン・ヒドロコルチゾン(ソルコーテフ®️)
(2)半減期が適度なため歴史的によく使われるプレドニゾロンPSL
(3)メチルプレドニゾロン (mPSL)やトリアムシロンで電解質作用が少ない(ソルメドロール®️、ソルメルコート®️)

(4)デキサメタゾン(デキサート®️、デカドロン®️)、ベタメタゾン(リンデロン®️)とても強力

下に行くほど作用開始時間が遅くなり、持続時間が伸びていき、ミネラルコルチコイド作用が少なくなっていく。即効性を狙うならばデキサメタゾンを使うよりはコルチゾールを使用するのが理にかなっている。

 

ステロイドカバーが必要な患者

ステロイドカバーが必要な患者
1:術前にグルココルチコイドが投与されている患者
2:視床下部ー下垂体ー副腎(HPA軸)に異常がある
3:ACTH刺激試験などで副腎機低下があきらか

Marik, Arch surg 2008, Requirement of perioperative stress doses of corticosteroids : a systematic review of the literatureは日常的に副腎皮質ステロイドを受けている患者では周術期に維持量を投与すれば一律のステロイドカバーは必要ないが、低血圧などが持続する場合はステロイドの使用を考慮する。HPAに問題があり生理的必要量のステロイドを受けている患者では周術期にステロイドカバーが必要であるとしている。

基本は維持量で手術侵襲が大きければ維持量+αステロイドを投与する。昔みたいに大量に投与する必要はなく、あくまで血圧が上がらないとき。敗血症でNA0.5ug/kg/minでも維持できなかった時に使うようなイメージ。

詳しい量については1998のanaesthesiaに記載あり。その後新しいのがでているかもしれませ。

 

 

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Peri-operative steroid supplementation. Anaesthesia 1998.

 

 

○余談だが臓器移行性やステロイドパルスについて

デキサメタゾンは髄液移行性・胎盤移行性が良い、メチルプレドニゾロンは肺移行性が高い。胎児のARDSなどの際にはベタメサゾン、デキサメタゾンを使用する。
プレドニゾロン胎盤のII型 11βヒドロキシステロイドヒドロゲナーゼにより賦活化されるので妊娠中でもPSL20mg以下なら退治に問題はないとされる。

ステロイドパルスにはmPSL 500~1000mgの点滴注射がおこなわれる。ミネラルコルチコイド作用が強いと浮腫のリスク(コルチゾン・ヒドロコルチゾン/プレドニゾロンなど)になるためパルスに使うのならばメチルプレドニゾロンデキサメタゾンなどだが、デキサメタゾンやベタメタゾンは半減期が長く受容体結合親和性が強いので生物学的半減期が長く(血中半減期で予想されるよりも)離脱に向かない。